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ヒマつぶし情報

2021.08.26

【人間失格】鬱っぽいけど好きな独白文5選【太宰治】

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はじめまして!自称クソ雑魚クリエイターの哀願です


普段はヴィレッジヴァンガードで働きながら休日、小説を書いたりDTMをいじったりしています


これからおすすめの書籍や音楽について語っていきます!


記念すべき第一回目はタイトルの通り、破滅型私小説作家・太宰治の問題作『人間失格』に出てくる声に出して読みたくなるような独白文を5つピックアップしてみました!


とは言え


『人間失格』は普段小説を読まない人でも映画化、漫画化、アニメ化と幅広くメディア展開されているので、タイトルだけでも知っている方は多いのではないでしょうか


今回はそんなあなたにも楽しんでいただけるように主人公の大庭葉蔵の性格や価値観にフォーカスしながら紹介しますね


※また本記事内では引用をしながら若干ネタバレをするので未読でネタバレを避けたい方は今すぐ逃げてください



太宰治の人間失格はこちらから読めます(リンク先、青空文庫)

簡単なあらすじとか

恥の多い生涯を送って来ました。からはじまる大庭葉蔵という青年の手記から大庭が他人に対する漠然とした恐怖の中、どのような人生を送ってきたかを辿る物語です。


人妻との心中未亡人の元でのヒモ生活長く続かない幸福な結婚生活など、大庭にとって人間、とりわけ女がどれほど恐ろしく、麻薬的な危険を孕んでいるかということがモテ男の大庭目線で綴られる小説です


この大庭ですが、人間恐怖による社会不適合に加えてかなりの依存体質なので、女だけでは飽き足らず酒や薬物にも溺れています。悲しいですね


物語自体はクズ男日記みたいな感じですけど、大庭があまりに悲観的なので大庭の目線でしか見えてこないようなや価値観を読むことができます


個人的には心がやさぐれそうに荒んでいる時などに読むことで考え方をシフトするのに役立っています!!


ではここからは人間失格の中で印象的な独白を引用しつつ5つ紹介します!


『自分には、淫売婦というものが、人間でも、女性でもない、白痴か狂人のように見え、そのふところの中で、自分はかえって全く安心して、ぐっすり眠る事が出来ました。

みんな、哀しいくらい、実にみじんも慾というものが無いのでした。』


風俗にハマった大庭の独白です


周りの人間の感情や熱量に違和感や不安感がある時に、執着心や面倒くさい感情無しで、なおかつ無条件に寄り添ってくれるような人間に安心してしまうこと、ないですか


ちょっと0か100かみたいな危険な感じはありますけどね


わからないでもないです



『世間とは、いったい、何の事でしょう。人間の複数でしょうか。どこに、その世間というものの実体があるのでしょう。けれども、何しろ、強く、きびしく、こわいもの、とばかり思ってこれまで生きて来たのですが、しかし、堀木にそう言われて、ふと、
「世間というのは、君じゃないか」
 という言葉が、舌の先まで出かかって、堀木を怒らせるのがイヤで、ひっこめました。』


悪友腐れ縁の堀木という男に『これ以上は、世間が、ゆるさないからな』と説教された大庭の独白です


独白は、『(それは世間が、ゆるさない)
(世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?)
(そんな事をすると、世間からひどいめに逢うぞ)
(世間じゃない。あなたでしょう?)
(いまに世間から葬られる)
(世間じゃない。葬むるのは、あなたでしょう?)』


と続きます


世間という漠然とした圧力が個人の意見をもっともらしくする為の虚構なのでは、という疑心暗鬼が生まれ、確信へと変わっていく場面です


実際、世間とか世論っていう概念は個人の集合的なところがあるので属するコミュニティーによって大きく変化してしまうものですよね


かくいう私は友人がいないので世間の声を聴くこともなく、なんとなく共感もし辛いですが真理っぽいですね




そうして自分たちは、やがて結婚して、それに依って得た歓楽は、必ずしも大きくはありませんでしたが、その後に来た悲哀は、凄惨と言っても足りないくらい、実に想像を絶して、大きくやって来ました。自分にとって、「世の中」は、やはり底知れず、おそろしいところでした。決して、そんな一本勝負などで、何から何まできまってしまうような、なまやさしいところでも無かったのでした。


本当に幸せって長続きしないですよね


でも同じように不幸せもきっと長続きしないですからね


まあ、大庭はずっと不幸せなんですけどね


何なんでしょうね、本当にこの人……



いまはもう自分は、罪人どころではなく、狂人でした。いいえ、断じて自分は狂ってなどいなかったのです。一瞬間といえども、狂った事は無いんです。けれども、ああ、狂人は、たいてい自分の事をそう言うものだそうです。つまり、この病院にいれられた者は気違い、いれられなかった者は、ノーマルという事になるようです。
 神に問う。無抵抗は罪なりや
?』


狂うほどの無抵抗


無抵抗だから狂ってしまったのか


狂っていたから無抵抗だったのか


……的な


『不幸。この世には、さまざまの不幸な人が、いや、不幸な人ばかり、と言っても過言ではないでしょうが、しかし、その人たちの不幸は、所謂世間に対して堂々と抗議が出来、また「世間」もその人たちの抗議を容易に理解し同情します。しかし、自分の不幸は、すべて自分の罪悪からなので、誰にも抗議の仕様が無いし、また口ごもりながら一言でも抗議めいた事を言いかけると、ヒラメならずとも世間の人たち全部、よくもまあそんな口がきけたものだと呆れかえるに違いないし、自分はいったい俗にいう「わがままもの」なのか、またはその反対に、気が弱すぎるのか、自分でもわけがわからないけれども、とにかく罪悪のかたまりらしいので、どこまでも自らどんどん不幸になるばかりで、防ぎ止める具体策など無いのです。』



薄々は気付いていたんですけど、大庭は風俗行く前に精神科なり心療内科なり行くべきだったのかもしれませんね


女医だの女性看護師だのがでてきたら詰みっぽい雰囲気はありますけどね




おまけ

『だいいち、大庭葉藏とはなにごとであらう。酒でない、ほかのもつと強烈なものに醉ひしれつつ、僕はこの大庭葉藏に手を拍つた。この姓名は、僕の主人公にぴつたり合つた。』


大庭葉蔵という名前の主人公が出てくる太宰のもうひとつの作品『道化の華』の一節です


※この『道化の華』に出てくる大庭は『人間失格』の大庭と似ているけれど別の人生を歩んでいる、いわばパラレルワールドの存在のように私は捉えています


書き出しは大庭を書く小説家の独白から始まります


この小説家は私小説を書いていることをほのめかしているので、この独白は恐らく太宰自身の本心で間違いないでしょう


その『道化の華』の中に大庭が心中した理由についての議論が成されています


『葉藏は長い睫を伏せた。虚傲。懶惰。阿諛。狡猾。惡徳の巣。疲勞。忿怒。殺意。我利我利。脆弱。欺瞞。病毒。ごたごたと彼の胸をゆすぶつた。言つてしまはうかと思つた。わざとしよげかへつて呟いた。
「ほんたうは、僕にも判らないのだよ。なにもかも原因のやうな氣がして。」』


言葉に出せないことも含めて、きっとこれこそが大庭を構成する全てなのかもしれませんね


太宰治の道化の華はこちらから読めます(リンク先、青空文庫)

ていうか、暗っ!!

こう、まとめてみるとやっぱり人間失格って暗いです


誰も突きたくなかった真理に触れてしまったような気すらします


この内容で面白いと思ったから書き始めたんですけどもしかしたら相当病んでたのかもしれません


しかし、これだけ繊細傷つきやすいキャラクターが主人公というのが魅力的ですよね


それも気を入れ替えて頑張って生きるとかではなく、大庭が大庭のまま社会から逸脱していくというところが好きです


そして心が病んだ時に常に病んでる大庭の価値観に触れて妙に納得して明日からも頑張れるような気持ちになるで、やはり人間失格も太宰治も偉大です


皆さんも是非、読んでみてくださいね


では、今回はこの辺で


「失敬するぜ、わるいけど」

ペンギンが好きな自称クソ雑魚クリエイターです

ヴィレッジヴァンガードで働く傍ら小説を書いたりDTMをいじったりして生活しています

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